「うちの子、まだ“ママ”しか言えなくて……」
「お友だちと同じ年なのに、話し方が遅い気がする」
そんなふうに、子どもの“言葉の遅れ”に不安を感じている親御さんは少なくありません。けれど実は、言葉の発達にはとても個人差があるのです。
本記事では、社会福祉士・精神保健福祉士として10年以上障害福祉・療育の現場に携わってきた筆者が、言葉がゆっくりな子への接し方や、日常に取り入れられる「遊び」「声かけ」のコツをわかりやすく紹介します。
「どんな支援をすればいいの?」「家庭でできることは?」と悩んでいる方に、少しでも安心してもらえるような内容になっています。
言葉が遅いってどんな状態?
◆「言葉の遅れ」とは
子どもの言葉の発達には、以下のようなステップがあります:
- 1歳ごろ: 単語(パパ、ワンワンなど)が出始める
- 1歳半ごろ: 指差しで要求や関心を伝える
- 2歳ごろ: 二語文(ママ、いない/ブーブー、きた)を話す
- 3歳ごろ: 簡単な会話ができるようになる
この目安よりも明らかにゆっくりしている場合、「言葉の遅れ」があると考えられます。
ただし、発音がはっきりしないこと=遅れているとは限りません。
言葉が遅れる原因って?
◆よくある要因
- 個人差(特に男の子に多い傾向)
- 聞く力(聴力)の問題
- 周囲とのやりとりの少なさ
- 発達特性(自閉スペクトラム症など)
- 言語発達に関する脳の発達の遅れ
大切なのは、「どうして遅れているか」を知ろうとする姿勢。
そして、日々の関わりの中で、子どもの言葉の芽を育てていくことです。
家庭でできる声かけの工夫7選
1. 「〜してみようか」と優しく提案
命令口調よりも、共感や提案のかたちで声をかけると、子どもは安心して言葉を受け取れます。
例:
×「立って!」 → ○「立ってみようか」
×「片付けて!」 → ○「おもちゃ、箱に入れようか」
2. 子どもの発語にゆっくり合わせる
子どもが「ワン!」と言ったら、「そうだね、ワンワンだね」と返してあげる。
共鳴反応は、言葉を育てる土台になります。
3. 繰り返し&ゆっくり話す
「これ、りんご。り・ん・ご、美味しいね」と、ゆっくり・はっきり・繰り返す。
子どもが“言葉のかたち”を理解しやすくなります。
4. ジェスチャーや表情も使う
言葉と一緒に身振り手振りや表情を使うと、言葉の意味が伝わりやすくなります。
「バイバイ〜」と手を振る、「おいしい!」で頬に手を当てる、などが効果的です。
5. 無理に言わせようとしない
「言ってごらん」「なんで言わないの?」などの声かけはNG。
プレッシャーをかけると、かえって発語が遠のくことがあります。
6. 子どもの関心に寄り添う
言葉は「伝えたい!」という気持ちが原動力。
電車が好きな子には「ガタンゴトン」「出発〜!」など、興味のあるテーマで言葉を増やしていきましょう。
7. 遊びの中で「言葉のやりとり」を楽しむ
言葉の練習ではなく、やりとりそのものを楽しむことが大切。
声かけに対して、ジェスチャーでも反応があればOK!そこから少しずつ発語につながります。
言葉を育てるおすすめの遊び5選
遊び名 | 効果 |
---|---|
指差し絵本 | 指を差して「これなに?」→「ワンワンだね!」などのやりとりを楽しむ |
手遊び歌 | 「パンダうさぎコアラ」など、動きと言葉がリンクする遊び |
ままごと | 「ジュースどうぞ」「ありがとう」など、会話のまねっこが自然にできる |
ことばパズル | 動物や食べ物などの言葉カードを使って発語を促す |
音まねあそび | 「ニャーニャー」「ブーブー」などの擬音で遊びながら言葉に親しむ |
相談した方がよいケースとは?
以下のような場合は、専門家に相談してみることをおすすめします。
- 2歳過ぎても発語がまったくない
- 指差し・目線のやりとりが少ない
- 音が聞こえていないような反応
- 言葉以外の発達にも気になる点がある
相談先:
- 市区町村の保健センター
- 発達支援センター
- 児童発達支援事業所
- 小児科・言語聴覚士(ST)
おわりに|ことばは“伝えたい”から始まる
言葉が出るタイミングは一人ひとり違います。
「話さないからダメ」ではなく、「どんな方法で伝えようとしているのか?」を見つめることが、親子にとっての第一歩です。
家庭での声かけや遊びを通して、子どもの“伝えたい”気持ちを育てていきましょう。
困った時は、一人で抱え込まずに支援機関に相談して大丈夫です。
一番の療育は、親子で笑顔になれる時間かもしれません。