障害のある子の育児・療育に向き合っていると、どうしてももう一人の子ども、「兄弟児(きょうだいじ)」への関わりに不安を感じることはありませんか?
- 「いつも我慢ばかりさせてしまっている」
- 「本当は甘えたいのに、遠慮してる気がする」
- 「私ばっかり、あの子に時間を取られてごめんね」
そんな風に思いながら、日々の子育てに奮闘しているあなたに伝えたいのは、
「その気持ち、すでに支援の第一歩です」ということ。
この記事では、10年以上障害福祉に関わってきた社会福祉士・精神保健福祉士の視点から、兄弟児への接し方や心のケア、家庭でできる配慮について、じっくりとお伝えしていきます。
そもそも「兄弟児」とは?
「兄弟児」とは、障害や病気を持つ子のきょうだいを意味する言葉です。
兄や妹、弟、姉など立場はさまざまですが、どの子にも共通するのは、“支援の必要性が見落とされがち”という点です。
◆ 兄弟児が抱えやすい感情とは?
- 愛されていないと感じる(愛情の偏り)
- 自分が我慢すればいいと諦めている(過剰な適応)
- 親に心配をかけまいと、本音を隠してしまう(自己抑制)
- 外では明るく振る舞っているけど、実は不安定(仮面の笑顔)
これらは一見「手がかからない子」「いい子」に見えることも多く、大人が気づきにくいという特徴があります。
親としての「罪悪感」に向き合う
兄弟児に関する支援の第一歩は、親自身の「罪悪感」とどう付き合うかにあります。
◆ 「あの子にばかり手がかかってごめんね」
これは多くの親御さんが抱く自然な感情です。しかし、この気持ちに蓋をせずに、「いま、自分にできること」に目を向けることが大切です。
◆ 完璧じゃなくていい。伝えるだけで支援になる
- 「本当はもっと遊んであげたい」
- 「あなたのことも大切に思っている」
こんな言葉を、1日1回、ほんの数秒でいいから伝えてみてください。それだけで、兄弟児の心には温かい灯がともります。
家庭でできる!兄弟児への関わり方7つのポイント
① 一人の時間をつくる
兄弟児と“1対1で過ごす時間”を意識的に確保してみましょう。5分でも10分でも大丈夫。特別な遊びや外出でなくても、
「○○ちゃんとだけで過ごせて嬉しいな」
と伝えることで、自尊心が育まれます。
② 話を聴く・気持ちに寄り添う
「つらい」「嫌だ」という感情を受け止めることが大切です。
🙆♀️ OK例:「そう思ったんだね」「嫌な気持ちになったんだね」
🙅♂️ NG例:「お兄ちゃんなんだから我慢して」「そんなこと言わないの」
③ 感情を表現してOKな環境をつくる
泣いてもいい、怒ってもいい。感情を出せる場所を家庭の中につくりましょう。
- 絵や文字で表現させる
- 感情カードを使って今の気持ちを共有
- 思い切り泣ける時間をあえて設けるのも効果的
④ 家族で「障害」を自然に話す
兄弟児は幼いなりに、障害のあるきょうだいのことを敏感に感じ取っています。
大人が隠すほど、不安や誤解が強まる可能性も。
「弟くんはおしゃべりが少し苦手なんだよ」
「ちょっとイヤイヤが多いけど、がんばってるよね」
と、年齢に合わせて少しずつ説明していきましょう。
⑤ 周囲に「兄弟児がいること」を伝える
幼稚園や学校、親せきなどに、「兄弟児のケアも必要」と伝えることで、周囲の理解と協力を得られます。
⑥ サポートグッズを使って関わりを深める
療育おもちゃや絵本を通じて、「一緒に遊ぶ」「役割を持たせる」ことで関係性が深まります。
おすすめ:
- 感情カード(兄弟で一緒に気持ちを共有)
- スケジュールボード(先の見通しが立つ安心感)
⑦ 専門家につなぐ・仲間をつくる
家庭だけで抱え込まず、以下のような支援も検討してみてください。
支援の場の例
支援先 | 内容 |
---|---|
児童発達支援・放課後等デイサービス | 兄弟も含めたペア活動など |
家族会・ピアサポート | 同じ立場の保護者・兄弟児との交流 |
カウンセリング | 気持ちを言語化しやすくする手助け |
年齢別に見る、兄弟児の感じ方と接し方
● 未就学児(3〜6歳)
- 甘えたい気持ちが強く出やすい時期
- きょうだいへの嫉妬を隠せないことも
対応のポイント:
抱っこやスキンシップをたっぷりと。「あなたも大切だよ」と毎日伝えてあげましょう。
● 小学生(7〜12歳)
- 周囲との比較や不公平感が強まる
- 「お兄ちゃんなんだから」と言われがち
対応のポイント:
“頑張りを見てるよ”と認める声かけが効果的。「あなたがいてくれて助かったよ」などの言葉が、心の支えになります。
● 中高生(13歳以上)
- 自立・反抗期が重なる
- 親への距離をとりたがる時期
対応のポイント:
距離感を大切にしつつ、見守る姿勢を。必要な時に相談できる大人を複数持てるよう、第三者支援につなげるのも◎。
5. 「兄弟児支援」が広がってきている今
近年、兄弟児支援の必要性は少しずつ社会に認識されつつあります。
- 支援者向け研修に「きょうだい支援」講座の導入
- きょうだい支援のNPO団体による交流会
- 兄弟児のための心理支援プログラム
あなたが感じている「どう接したらいいか分からない」という悩みは、決してひとりだけのものではありません。社会全体で、兄弟児の心を守っていく流れが生まれています。
まとめ|“ふたりとも大切”は、ちゃんと伝わる
障害のある子に手がかかるのは、避けられない現実です。
でも、「もう一人の子にもちゃんと向き合いたい」と思うあなたの気持ちは、兄弟児に必ず伝わります。
大事なのは、
- 完全じゃなくていいから関わること
- 少しでも気持ちを伝えること
- 誰かと一緒に悩める環境を持つこと
兄弟児が“自分も大切にされている”と感じられるよう、今日からできることを一緒に始めてみましょう。