「服のタグが気になる」「特定の音に極端に敏感」「逆に痛みに気づかない」
こうした子どもの様子に戸惑いを感じたことはありませんか?
それは感覚の偏り=感覚過敏や感覚鈍麻が関係しているかもしれません。
この記事では、障害福祉10年の経験を持つ社会福祉士パパの視点から、感覚過敏・鈍麻の基本と、家庭でできる支援の工夫をしっかり解説します。発達に気になるサインが見られるお子さんをサポートしたいご家庭に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
感覚過敏・感覚鈍麻とは?
◆ 感覚とは?
私たちは日常生活の中で、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚、そして固有感覚・前庭感覚といった“7つの感覚”を使って、環境に適応しています。
- 固有感覚:身体の位置や動きに関する感覚
- 前庭感覚:バランスや重力、回転などを感じ取る感覚
これらの感覚の受け取り方が強すぎたり、弱すぎたりすることで、日常生活に支障が出るのが「感覚過敏・鈍麻」です。
◆ 感覚過敏とは?
感覚刺激に過剰に反応してしまう状態。
例:
- 洋服のタグや靴下の縫い目を極端に嫌がる(触覚過敏)
- 掃除機やチャイムの音に過敏に反応する(聴覚過敏)
- 特定の食感・匂いを極端に嫌う(味覚・嗅覚過敏)
◆ 感覚鈍麻とは?
感覚刺激を感じにくい・反応が鈍い状態。
例:
- 強くぶつかっても痛がらない
- 呼ばれても気づかない
- 食事中に口の周りが汚れていても気づかない
感覚過敏・鈍麻の子に見られる行動例
感覚の種類 | 過敏の例 | 鈍麻の例 |
---|---|---|
聴覚 | 音に驚きやすい、耳をふさぐ | 呼びかけに気づかない |
触覚 | タグ・靴下を嫌がる | 痛みに鈍い |
視覚 | 強い光を嫌がる | 物に気づきにくい |
前庭感覚 | 乗り物酔いしやすい | 高いところでも平気でジャンプする |
味覚 | 偏食・食感の違いに敏感 | 味の違いに気づかない |
家庭でできる!感覚への支援と工夫
① 触覚過敏への支援
- 洋服の素材を選ぶ(無縫製・タグなし)
- ブラッシング(肌刺激を和らげる感覚統合療法)
- スライム・粘土遊びで触覚の幅を広げる
② 聴覚過敏への支援
- ノイズキャンセリングイヤーマフの活用
- 静かな時間や空間を設ける
- 音楽や環境音で心を落ち着かせる
③ 感覚鈍麻への支援
- マッサージや圧力をかけた遊び(固有感覚の刺激)
- バランスボール・トランポリンなどで動きを意識させる
- 香りの強い石けん・食材で嗅覚を刺激
感覚の問題は「わがまま」ではない
多くの保護者が「わがままなのかな?」と感じてしまいがちですが、感覚の特性は本人にはコントロールできない「困りごと」です。
周囲が理解し、環境調整を行うことで、
- 朝の準備がスムーズになる
- 食事が楽しくなる
- 集団生活がしやすくなる
といった実際の生活の質(QOL)の向上に大きく繋がります。
専門的支援につなげる判断ポイント
以下のような場合は、専門機関への相談をおすすめします。
- 日常生活に支障が出ている
- 着替え・食事・外出が困難
- 集団行動への不適応が目立つ
◆ 相談先一覧
機関 | 内容 |
---|---|
市区町村の子育て支援窓口 | 発達相談・療育支援の情報提供 |
児童発達支援事業所 | 療育の専門的アプローチが受けられる |
発達外来・小児神経科 | 医学的な診断・評価が可能 |
おすすめ療育グッズの活用
支援を継続していく上で、遊び感覚でできる療育グッズも強い味方になります。
例えば…
- ブラッシングブラシ(触覚支援)
- サウンドマフ(聴覚支援)
- 感覚統合ブランコ(前庭感覚刺激)
まとめ|大切なのは「特性への理解と環境づくり」
感覚の困りごとは目に見えにくく、周囲の理解が得られにくいこともあります。ですが、「困っているのは本人」ということを忘れず、寄り添うことが何よりの支援です。
家庭でできることから少しずつ取り組み、必要に応じて専門機関と連携していきましょう。感覚の特徴を理解すれば、子どもの行動の見え方が変わりますよ。