森達也監督のドキュメンタリー映画『A』は、オウム真理教の内部に迫りながら、信者たちの人間性と社会との対立を静かに映し出します。
本作はセンセーショナルな演出を排除し、視聴者に「人間とは何か」を問いかける作品です。
善悪の二元論を超えた新たな視点で、複雑なテーマを丁寧に描き出した『A』は、観る者に深い余韻を残し、価値観が揺さぶられます。
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Aの概要
『A』は、オウム真理教という宗教団体に焦点を当てた日本のドキュメンタリー映画です。
監督はジャーナリストでもある森達也で、カルトや宗教をテーマにした作品として注目を集めました。
オウム真理教が起こした一連の事件後、社会的に厳しい目を向けられていた教団の内側に迫り、その構造や人々の姿を記録しています。
1998年製作/135分/日本
劇場公開日:1998年9月9日
Aのあらすじ
1995年の地下鉄サリン事件などのオウム真理教による凶悪事件を受けて、社会から徹底的な糾弾を受けた教団。
その状況下で、映画は教団の広報部長・荒木浩を中心に取材を進めます。
森達也監督は、教団側の「人間らしさ」と、メディアや世間の強烈な敵意との間にあるギャップを描きます。
映画は、事件を肯定するわけでも擁護するわけでもなく、あくまで冷静に事実を映し出し、視聴者に思考の余地を与えます。
Aのスタッフ・キャスト
監督:森達也
出演:荒木浩…オウム真理教の広報部長として出演。カメラの前でオープンに語り、教団の状況や彼自身の考えを伝えます。
Aの見どころ
Aの見どころは、
冷静で中立的な視点
森達也監督は、社会から糾弾される教団を「良い・悪い」という単純な図式で描くのではなく、人間的な側面に目を向けています。
この手法は、当時のメディア報道の一方的な構図とは一線を画しています。
荒木浩という人物像
教団のスポークスマンとして登場する荒木は、冷静さと苦悩を併せ持つキャラクターとして印象的。
彼の言葉からは、宗教団体の内部の思考や価値観が見えてきます。
メディアと社会の関係性
映画では、取材するメディアや社会が教団を「悪」として断罪し続ける姿勢にも光を当てています。
この構図を客観的に捉えることで、視聴者自身が「報道の在り方」について考えるきっかけを提供します。
「理解すること」の難しさ
ドキュメンタリーは、視聴者に「理解」することの複雑さを伝えます。
賛否が分かれるテーマを通じて、森達也監督の問いかけが観る者の心に響きます。
Aの感想
『A』を観た感想は、なんていうか、すごく重いテーマを扱ってるのに、めちゃくちゃ冷静で丁寧な映画。森達也監督の視点が独特で、これをただの「オウム真理教のドキュメンタリー」として片付けるのはもったいない。
まず、この映画のすごいところは、監督があくまで「人間」を映してるってところ。普通、オウム真理教の話題ってなると、メディアではすごいセンセーショナルに取り上げられるじゃないですか? でも『A』はそういうのとは全然違って、冷静に、淡々と、そして真っ正面からその内部の人たちを記録しています。特に荒木浩っていう広報部長が主役みたいなポジションなんだけど、彼がめっちゃ興味深い人物なんです。教団の立場を一生懸命説明してるんだけど、どこかで彼自身も「何かがおかしい」って気づいてるようにも見えるのが印象的でした。
それにしても、あの取材環境は本当にピリピリしていましたね。街頭インタビューとか、取材を受ける荒木さんの姿とか、もう周囲の目が怖すぎる。社会全体が「敵意の塊」みたいになってて、その圧力の中で彼らがどうやって日々を過ごしてるのかが、ひしひしと伝わってきました。それと同時に、教団内の普通の人たちの姿が映されてるのが、また複雑な気持ちにさせられて。「こういう人たちもオウムなんだ」って改めて実感させられるというか。
あと、この映画は「結論」を出してないのがいい。観る側に答えを押し付けてこない。むしろ、「どう思う?」って問いかけてくる感じ。自分で考えさせられるドキュメンタリーっていうのは、本当に貴重です。例えば、荒木さんが何気なく話してる言葉に、なんとなく共感できる部分もあれば、「いや、それは違うだろ」って突っ込みたくなる部分もあったりして。そういう矛盾も全部受け入れた上で、観る側が考えなきゃいけない作りになっています。
あと、森監督の撮り方が本当にうまい。無駄に派手な演出とか感情的なナレーションとか一切ないのに、画面に引き込まれるんです。特に砂埃が舞うシーンとか、静かな日常の中に潜む緊張感が伝わってきて、なんか胸が苦しくなった。でもその静けさの中に、逆にものすごい力強さがあって、観終わったあとに心にズシンと残るんです。
『A』を観てる間ずっと緊張してるし、考えさせられるテーマが重すぎて、観終わったあとに「これからどうしよう…」って価値観が揺さぶられました。
『A』は、オウム真理教の信者を「理解する」とか「擁護する」っていう話じゃなくて、ただ「そこにいる人たち」を映しています。善悪の二元論じゃ片付けられない人間の姿を、静かに、でもしっかりと見せてくれる映画だと思いました。観るのに勇気はいるけど、その分、得られるものも大きい作品です。ドキュメンタリーとしての完成度が高く、観る者に多くの問いを投げかける一作です。
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